DRUNK LIKE ME!

Category南越谷雑想綺譚
去年の今頃、戯れに駅前の立ち呑み屋で呑み代稼ぎに皿洗いを
している時に彼と知り合った。店の常連で比較的空いている明るいうちの
時間帯から呑みに来ているのですぐに顔見知りになった。
私よりかなり年配の彼は他の常連客に聞いても自身のことを多くは語らないらしく
自分のトラックを持ち込んでその運転手として日々の糧を得ていると言うこと
ぐらいしかわかっていないらしかった。
お世辞にも良い酒の呑み方をしていなかったのだが、その愛嬌がある表情に
他の人たちとは違って私は不思議と不快感は感じなかった。

彼が最近、店に来ていないと言う話は風の噂で聞いていた。

その日久しぶりに店に顔を出すと彼が2、3日前に自宅で亡くなっているのが
発見されたという話を聞いた。
引き取る身内は今のところいなく葬儀場に安置されているらしかった。
常連の客達は「あいつは馬鹿野郎だ!何もいわないから」などと口々に
悔やんでいたが私は少し違う思いを懐いた。
もちろん悲しい、しかし、いくら顔見知りに、仲良くなろうとも話せないこともあったのだろう。

そして私はふと夏の夕暮れ時に彼が以前には妻も子供もいたという話をボソッと私に
話してくれたことを思い出した。
確かに亡くなるには早い年齢ではあるけれども、その酒の呑み方からして
何か彼は行くべくして常世に旅立っていったのではないのかと
私には思えてならないのだ。

すべからく私もこの先数十年の間には確実にそちらに行く事になる。
その時は改めて酒を酌み交わしながら彼の生い立ちを聞いてみたいと
ビールグラスを傾けた時に東武線の高架の隙間から静かに雨粒が落ちてきた。
スポンサーサイト

2 Comments

lastchristmas  

亡くなられた方のことを書かれた文章ではありますが、このエッセイはとても素敵ですね。最後の件にも感動しました。

飲む時はお互いが何者か分からないくらいのほうがいいですね。

2012/04/25 (Wed) 19:02 | EDIT | REPLY |   

軍曹殿!  

lastxmasさん>

生きていれば色々あります。
わたくしは死ぬ時に「まぁこんなもんかな」と思えれば上出来
かななんて思っております。

そして誰でもよいので「こんなやつがいてさぁ」と酒の肴の話題にのぼれば
さらに上出来です!

2012/04/25 (Wed) 23:09 | REPLY |   

Post a comment